遺品整理と買取は役割が異なる
遺品整理は、故人の持ち物を確認し、家族で残す物と手放す物を整理する作業です。買取は、その中から再利用や売却を検討できる物を確認する一つの方法。家財をすべて処分する作業とも異なります。
買取だけで遺品整理全体が終わるとは限りません。反対に、処分を先に一括で進めると、確認する機会を失う場合があります。
相続放棄を考えているなら、順番が変わる
買取と処分のどちらを先にするかより前に、確かめることがあります。相続を放棄する可能性が残っているかどうかです。
民法第921条は法定単純承認として、「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」は単純承認をしたものとみなす、と定めています。ただし「保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない」と続きます。財産を保つための行為は例外ですが、何が「処分」にあたるかは物と事情によって変わります。
売って現金にする行為は、この点で特に慎重になる場面です。放棄の可能性があるうちは、買取の相談より先に家庭裁判所か専門家へ確認してください。申述の期限は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月。期限の全体像は遺品整理はいつから始めるかにまとめています。
重要書類・形見・借り物を先に分ける
- 遺言書、相続や不動産に関する書類
- 通帳、保険、年金、税金の書類、印鑑、鍵
- 写真、手紙、日記、趣味の物
- 借り物、図書館の本、仕事関係の資料
- 家族が残したいと希望する物
必要か判断できない書類は捨てません。家族によって希望が違う物は、番号を付けた写真を共有し、確認期限を決めます。詳しい例は実家の片付けで捨ててはいけない物でも確認できます。
封をした遺言書が出てきた場合は、その場で開けないでください。民法第1004条は、封印のある遺言書は家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いがなければ開封できない、と定めています。
家財を運び出す前に確認したい物
古い家具、器、籠、木箱、民具、農具、照明、建具などは、名前や作者が分からなくても確認できる場合があります。部屋全体、品物の正面と底面、印やラベル、傷、付属品、数量を撮ります。
写真を撮る前に強く洗ったり、接着したりする必要はありません。食器は古い食器は売れる?、家具は古い家具は処分前に確認した方がよい?に確認箇所をまとめています。
趣味の物は、量がまとまって出てくるぶん先に処分されがちです。レコードは袋から抜かず、置き場所ごとにまとめてください。厚くて重い盤は年代が違います。フィルムカメラは裏ぶたを開けないこと。中に撮り終えたフィルムが残っていることがあり、開けた時点で写真は消えます。どちらも「動かないから価値がない」とは限りません。
許可は2種類ある。ひとつでは足りない
買取と処分を1社にまとめて頼むとき、その業者が持っている許可を確かめます。必要な許可は2つあり、片方だけでは両方をこなせません。
- 家から出た物を運んで処分するには、市町村の一般廃棄物収集運搬の許可
- 中古品を買い取って商売にするには、公安委員会の古物商の許可
産業廃棄物処理業の許可では、家庭から出た物の代わりになりません。市町は許可業者の名簿を公開しているので、見積もりを頼む前に名前があるかを確かめられます。ただし名簿にあっても、扱う品目が「せん定枝・草木のみ」のように限られている業者がいます。確かめ方は片付けを頼む業者に許可があるかにまとめました。
買取確認後に処分方法を決める
確認した物がすべて買取や引き取りの対象になるわけではありません。状態、需要、数量、地域、搬出条件によって判断は変わります。難しい物が残る前提で、自治体や許可業者など適切な処分先も確認します。
買取と処分を同じ相手に頼む場合は、見積もりの書き方に注意します。買取額を差し引いた金額だけを示されると、作業費がいくらで、買取がいくらだったのかが分かりません。処分の見積もりと買取の金額は、別々に出してもらってください。作業費の内訳も、人件費、トラックの台数、処分費の3つに分かれているかを見ます。
国民生活センターの相談事例には、当日にトラックの台数が増え、最終請求が見積金額の2倍を超えた例があります。見積書のどこを読むかは遺品整理の見積もりで確かめることで詳しく扱いました。
家族間で判断をそろえるために記録する
- 物を動かす前の部屋を撮る
- 残す物に番号を付ける
- 希望する家族の名前を記録する
- 確認中の物は期限を決める
- 手放した物の行き先を残す
売った物、譲った物、処分した物の行き先を残しておくと、あとから家族の間で話が食い違ったときに戻れます。金額が付いた物は特に、いつ誰にいくらで渡したかを控えておいてください。
結論が出ない物は、その日に決めなくて構いません。保留する量と期限だけを決め、気持ちと手続きの両方が整ってから見直します。全体の流れは遺品整理前の家財確認ガイドにまとめています。
民法の条文は e-Gov 法令検索、相続放棄の期限は裁判所の案内で、2026年7月28日に確認しました。何が「処分」にあたるかは事情によって変わります。判断は家庭裁判所か専門家へご確認ください。




