床の間や玄関に置かれたままの壺や花瓶。片付けの日に、まとめて新聞紙で包んで箱に入れる。その前に、中をのぞいてください。水が残っていることがあります。
中の水と枝を先に出す
長く生けたままの花器は、底に水が溜まっています。枝が挿さったまま乾いて、器の中で固まっていることもあります。
抜けない枝を無理に引くと、口の内側が欠けます。器を横にして、枝のほうを支えながらゆっくり回してください。それでも動かないなら、そのまま置いておいて構いません。
水を捨てたあとは、逆さにして乾かします。中に水が残ったまま箱詰めすると、包んだ紙が湿って器に貼り付きます。
つやが無いのは、古いからとは限らない
焼き物のつやは、うわぐすりによって出ます。ところが、うわぐすりをかけない焼き物があります。
岡山県の備前焼は、そのひとつです。中国経済産業局は、この焼き物の特徴をこう書いています。
「酸化鉄を多く含んだ備前粘土の特徴を生かすため、釉薬を一切使わず、また、絵付けも施さず、長時間高温で焼き締めることにより、素朴な土味と簡潔な造形、独特な窯変を生み出しています。」
うわぐすりも絵付けもしない、と書かれています。つまり、つやが無く、絵も描かれていない壺を「地味だから古道具でもない」と判断すると、逆のことがあります。
描いた模様か、焼いて出た模様か
絵付けをしない焼き物にも、色や線は出ます。焼くときに出るからです。備前焼の技術・技法には、次のものを焼成によって出現させること、と定められています。
- 火だすき — 細い線が走ったように見えるもの
- 胡麻 — 粒が飛んで付いたように見えるもの
- 桟切 — 器の一部だけ色が変わっているもの
- 牡丹餅 — 丸い跡が残っているもの
- 伏せ焼、青備前
名前を覚える必要はありません。見分けたいのは、模様が表面に乗っているか、土そのものの色として出ているかです。
光を斜めから当てて、模様の縁を見てください。描いた模様は縁がはっきり切れていて、指でなぞると段差を感じることがあります。焼いて出た模様は縁がぼやけ、段差がありません。
丸い跡が残っている物は、洗って落とそうとしないでください。汚れではなく、焼くときに何かを載せた跡です。
産地は、思っているより近い
備前焼の主要製造地域は、岡山県備前市と岡山市です。国の伝統的工芸品に指定されたのは昭和57年11月1日で、主な製品には食器や酒器のほかに花器と置物が挙がっています。
備後の家から出てくるのは、遠い産地の物ばかりではありません。県境をひとつ越えた先で作られた花器が、贈り物として床の間に置かれたまま残っている、ということが起こります。
もっとも、これに当てはまるから備前焼だとは言えません。うわぐすりをかけない焼き物は各地にあります。分かるのは「どういう作り方の物か」までです。焼き物の地の見方は古い食器は売れる?にも書きました。
香炉は、置かれていた場所で行き先が変わる
香炉は、床の間にも仏壇にも置かれます。同じ形でも、どちらにあったかで扱いが分かれます。
仏壇の前で燭台と花立てと三つ組で使われていた物は、仏具として考えることになります。仏具の出し方は市町で結論が逆になることがあるので、遺品整理で捨て方が分からない物を先に読んでください。
床の間や違い棚に単独で置かれていた物は、置物や花器と同じ扱いで構いません。ふたが金属でできていることがあり、本体と材質が違います。ふたは本体の横に並べて、離さないでください。
撮るのは5か所
- 全体。正面から、床に置いた状態で
- 口の内側。真上から
- 底。糸底の削り跡や文字が出ることがある
- 模様の出ているところ。斜めから光を当てて
- 箱があれば、ふたの表と裏
欠けやひびは隠さずに撮ってください。写っていないと、あとで話が食い違います。読めない文字は読めないまま撮る、という進め方は名前の分からない古道具でも相談できる?と同じです。
手放すと決めた後の行き先
焼き物なので、ごみとして出すなら燃やせない区分に入ります。大きさによっては粗大ごみです。区分の呼び名は市町村ごとに違うので、自分の地区の案内を確かめてください。割ってから出すよう求める市町もあります。
買取も頼むなら、その業者に古物商の許可があるかを確かめます。家から出た物を運ぶ許可とは別の許可です。確かめ方は片付けを頼む業者に許可があるかにあります。
遺品整理の途中なら、処分と買取のどちらを先にするかで手順が変わります。遺品整理と買取はどちらが先?を先に読んでおくと、二度手間になりません。
水を出す、模様をこすらない、ふたを離さない。この3つで判断は後からできます。実家の片付け中なら捨ててはいけない物として一度保留してください。
古い物の見方は古い物を手放す前のガイド、確認対象の例は相談対象になりやすいものにまとめています。
備前焼の指定年月日と特徴は経済産業省中国経済産業局「生活関連産業(伝統的工芸品)」で、技術・技法と主な製品は一般財団法人伝統的工芸品産業振興協会「備前焼」で、いずれも2026年8月2日に確認しました。「釉薬を一切使わず」は中国経済産業局の特徴欄の記載で、技術・技法の条文に釉薬の語はありません。家にある壺が備前焼であるとは限りません。ごみの区分は市町村ごとに異なります。




