家の解体が決まったあと、最後まで話が出ないのが庭です。灯篭、水をためる鉢、飛石、庭の隅に据えた大きな石。家の中の物とは違って、持ち上げられるかどうかで行き先が変わります。
庭は解体の見積もりに入っていないことがある
建物の解体を頼んだつもりでも、見積書の範囲が建物だけになっている場合があります。門、塀、庭木、庭にある石は建物の外なので、別に数えるという考え方です。
市町の補助でも同じ線が引かれていることがあります。尾道市の空き家の除却支援では、敷地内の附属物である樹木、門、塀などの除却は補助の対象に含まれません。制度の側の詳しい条件は尾道市の空き家を解体する前ににまとめました。
ですから、庭の石をどうするかは、家の中を片付けるのと同じくらい早い段階で決めておくことになります。更地にする約束なら、業者はいずれ動かします。動かし方を選べるのは、その前だけです。
人が抱えて運べる重さには目安がある
石を前にして、二人がかりで持てそうかどうかを目で測ることになります。このとき参考になるのが、厚生労働省の職場における腰痛予防対策指針です。仕事として重い物を扱う場合の指針ですが、数字が具体的です。
重量物取扱い作業の項に、こう書かれています。満18歳以上の男子労働者が人力のみにより取り扱う物の重量は、体重のおおむね40パーセント以下となるように努めること。満18歳以上の女子労働者では、さらに男性が取り扱うことのできる重量の60パーセント位までとすること。
続きも大事です。この重量を超える物を扱わせる場合は、適切な姿勢で身長差の少ない労働者2人以上で行わせるように努め、各々に重量が均一にかかるようにすること、とあります。同じ指針は、そもそも重量物の取扱いは動力装置で自動化し、それが難しければ台車や補助の道具で人力の負担を軽くすることを原則としています。
体重60キロの人なら24キロほどが目安です。庭の飛石一枚でもこれを超えることがあります。灯篭や庭石は、たいてい人力の範囲を外れています。
1トンを超えると、資格のある人の作業になる
大きな石を動かすなら機械を使うことになります。ここで法律の線が1つ入ります。労働安全衛生法施行令の第20条は、就業制限のかかる業務を並べていて、その第16号に「つり上げ荷重が一トン以上のクレーン、移動式クレーン若しくはデリックの玉掛けの業務」が入っています。
玉掛けとは、荷に帯や鎖をかけて機械に吊らせる作業のことです。仕事としてこれを行うには、決められた資格が必要になります。同じ条の第7号には、つり上げ荷重が1トン以上の移動式クレーンの運転も挙がっています。
つまり庭石の移動は、頼む側から見ると「人を集めれば済む作業」ではありません。機械が入る道があるか、庭まで届くかも、そこで一緒に決まります。車を寄せられない家の事情は尾道の坂の家を片付けるで書いた話と重なりますが、あちらは距離の問題で、こちらは重さの問題です。
灯篭は積んであるだけのことが多い
庭の灯篭を1つの塊だと思っている方がいますが、多くは何段かに分かれています。上から順に、丸い玉、笠にあたる部分、火をともす窓のある部分、その下の台、柱、いちばん下の土台。接着せず、重ねてあるだけのものも珍しくありません。
だから、1段ずつなら動かせることがあります。ただし気をつけたいのは順番です。上を外さずに柱を揺らすと、笠から崩れます。石は落ちれば欠けますし、その下に足があれば危ないほうが先です。
段の数と、それぞれの高さを控えておくと、後から組み直せます。ばらした写真だけでは、どの向きで載っていたかが分かりません。崩す前に、据わっている状態を撮ってください。
水をためる鉢と庭石は、据え方を先に見る
手を清めるための鉢は、地面に置いてあるものと、半分埋めてあるものがあります。埋まっているものは、見えている高さより深いことがあります。掘り出す作業が入るので、地面より上の大きさだけで判断しないでください。
水がたまったままなら、先に抜いておくほうが軽くなります。冬に凍って割れている鉢もあります。内側の底や縁に、ひびが入っていないかを見てください。
庭の隅に据わっている大きな石も同じで、土に埋まっている部分の見当がつきません。周りの土を少し払って、地面との境を確かめる程度にしておきます。
記録は寸法と、庭全体の並びで残す
庭の物は、1つずつ写しても伝わりにくいところがあります。どこに何が据わっていたかという並びのほうに意味があるためです。
- 縁側や玄関から見た庭の全体。灯篭と石の位置関係が分かるように
- 灯篭は正面と側面。段の境が見えるように
- 鉢や石は、巻き尺を当てて高さと差し渡し
- 地面との境。埋まっている物はここが手がかりになる
苔や汚れは落とさないでください。石の表面は、洗うと風合いが変わることがあります。名前が分からない物の記録の取り方は名前の分からない古道具でも相談できる?と同じ考え方です。
頼む相手と、運び出す道を先に決める
石の引き取りを頼む場合も、相手に許可があるかは別に確かめます。家から出た物を運ぶ許可と、中古品を買い取る許可は別のものです。確かめ方は片付けを頼む業者に許可があるかにあります。
解体全体の順番は解体の前に片付けることに、家に付いている物は欄間と建具は解体の前に外すにまとめました。庭の物を残すかどうか迷ったら、いったん保留にする考え方は実家の片付けで捨ててはいけない物と同じです。
庭の石は、家の中の物と比べて相談が遅れがちです。重いから後回しになるのだと思います。ただ、重いからこそ、動かし方を決めるのに日数がかかります。更地の話が出た時点で一度見ておいてもらえたら、と思っています。
人力で取り扱う重量の目安は厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」(平成25年6月18日付け基発0618第1号の別添)、玉掛けの就業制限は労働安全衛生法施行令第20条により、いずれも2026年7月30日に確認しました。指針は労働者の作業を対象としたもので、家庭での作業を規制するものではありません。尾道市の補助の対象範囲は同市の案内によります。




