ここを測らずに見積もりを頼むと、正確な金額が返ってきません。測り方から書きます。
距離ではなく、往復の時間を測る
車を止められる場所に立ち、玄関まで実際に歩いてください。そして時間を計ります。空荷で片道3分なら、荷物を持てば5分、往復で10分。これが1回の運搬にかかる最小の時間です。
距離より時間のほうが実感に近いのは、坂と階段では歩幅も速度も変わるからです。地図上では80メートルでも、途中に段差と曲がり角があれば別物になります。往復10分の家で家財を100回運べば、それだけで16時間。2人でも8時間かかります。
この数字が出れば、何を捨てて何を運ぶかの判断が変わります。運ぶ手間のほうが物の価値を上回るものが、はっきり見えてきます。
階段があると、台車が使えない
平地なら台車に積んで一度に何箱も運べます。階段が挟まると、その方法が消えます。人が手で持てる分だけが、1回に運べる量になります。
記録しておく項目は次のとおりです。
- 階段の段数と、途中に踊り場があるか
- いちばん狭い場所の幅(すれ違えるか、大きな物を横にできるか)
- 曲がり角の内側の幅と、頭上の障害物
- 手すりの有無と、路面が濡れたときの状態
- 夜間の照明
曲がり角は見落としがちですが、たんすや冷蔵庫が通るかどうかはここで決まります。直線部分がいくら広くても、角が回れなければ通りません。
大きな家具は、入れた時と同じ道では出せないことがある
「運び込めたのだから運び出せる」とは限りません。何十年か経つ間に、庭木が育ち、増築があり、隣に塀ができ、擁壁が直されていることがあります。搬入したのが建築中で、壁がまだ無かったという家もあります。
通らない場合の選択肢は、分解するか、窓や縁側から出すか、その場で解体するかです。桐たんすや水屋のような家具は、分解できる作りのものがあります。ただし壊すと価値が消えるものもあるため、判断がつかないものは動かす前に確かめてください。目安は相談対象になりやすいもの、家具の見方は古い家具は処分前に確認した方がよい?にまとめています。
他人の土地を通るなら、先に断っておく
坂の集落では、家までの道が私道だったり、隣家の敷地の端を通っていたり、共用の階段や路地を経由していたりします。長年そのまま使っていても、大量の荷物を何十往復も運ぶとなれば話が変わります。
作業日の前に、隣家と町内会へ一声かけておいてください。通る回数、作業する日、車を止める場所。伝えておけば、当日に止まりません。道をふさぐ可能性があるなら、作業の方法を依頼先とあらかじめ相談します。
荷物を一時的に置く場所も決めておきます。玄関前に少しずつ出しながら運ぶのか、車の近くまでまとめて下ろしてから積むのか。後者のほうが効率は上がりますが、置き場所が要ります。
車をどこまで入れるかで、費用が変わる
軽トラックが入れる道と、2トン車が入れる道は違います。大きい車が入らなければ、小さい車で何度も往復するか、荷物を人手で車まで運ぶ小運搬が加わります。どちらも時間と人数に跳ね返ります。
停める場所の候補を複数見ておくと選択肢が増えます。近くの空き地、待避所、少し離れた広い道。それぞれについて、玄関までの往復時間を測っておけば、当日どこを使うか判断できます。
時間帯も見ておいてください。観光の人が多く通る道、通学の時間帯、生活道路として使われる朝夕。狭い道で作業車を止めると、通行の妨げになります。
運び出したあとの行き先を、同じ日に決めない
坂の家では、家から車まで下ろすだけで一日が終わることがあります。そこから施設へ運ぶ工程は別に考えてください。市の施設は受入日と受入時間が決まっていて、休日に開くところは限られます。
持ち込み先と受入日は尾道市の粗大ごみの出し方、そもそも施設が受け取らない物は尾道市のクリーンセンターへ持ち込めない物で確認できます。下ろしてから行き先が無いと分かるのが、いちばん困る形です。
この条件は、市の制度も前提にしている
車の入らない家は、尾道では例外ではありません。市の空家等対策計画は、尾道水道の南側に広がる一帯を「斜面市街地」と呼び、歴史的な建造物や路地、寺院が点在する景観として位置づけています。中心市街地と尾道三山の斜面市街地は景観重点地区に定められ、管理不全な空き家による景観の阻害を防ぐ必要がある、とも書かれています。
規模も示されています。令和4年度(2022年度)の空家等実態調査では、市内の空家等の総数は7,733件でした。平成27年度(2015年度)の調査時は7,353件で、除却された件数より新たに空き家となった件数のほうが多かった、と報告されています。
制度の側にも表れています。尾道市空き家バンクの対象区域は、町全域が対象になる区域とは別に、「車が入れない路地に面した敷地」という区切りが設けられています。東御所町、土堂一丁目、土堂二丁目、十四日元町、久保一丁目から三丁目、尾崎本町がこれに当たります。
この区域の空き家をバンクへ登録すれば、家財道具の処分費に補助を受けられる可能性があります。上限20万円で、清掃や庭木の伐採も対象です。条件は尾道の空き家は家財の処分に補助が出るにまとめました。処分してからでは受け取れないので、運び出す前に確かめてください。
公式情報確認日:2026年7月25日。件数は第2期尾道市空家等対策計画(令和4年度空家等実態調査)に拠ります。対象区域と補助の要件は変更されることがあるため、着手前に尾道市の最新情報を確認してください。
記録は、見積もりを頼むときに効く
ここまでに挙げたものは、そのまま業者へ渡す資料になります。車を止める場所から玄関までの連続写真、往復の所要時間、階段の段数、いちばん狭い場所の幅、大型家具の寸法と点数。
これが無いと、現地を見るまで金額が出せません。逆に揃っていれば、遠方に住んでいても話が進みます。市外から通う場合の準備は遠方から実家を片付ける方法、尾道で片付けるときの全体の注意点は尾道市で実家・空き家を片付ける前に確認したいことにまとめています。
坂の家の片付けは、量の問題ではなく段取りの問題です。最初の一日は、何も運ばずに測るだけで構いません。




