更地になった土地の写真を送っていただくことがあります。長く気にかけてきた家が無くなって、これで終わりですねと書かれている。けれど書類の上では、まだ建物があることになっています。
期限は1か月。申請するのは所有者の側
不動産登記法の第57条に、建物の滅失の登記の申請という条文があります。建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない、というものです。
登記名義人、つまり登記簿に所有者として名前が載っている人が申請します。解体を請け負った業者が代わりに出してくれるわけではありません。土地家屋調査士に頼む形をとることもできますが、頼むかどうかを決めるのは所有者です。
1か月という期限は、工事が終わってから数えます。更地の引き渡しを受けた日から動き出すつもりでいると、書類を集める時間があまり残りません。
名義が親のままだと、そこで止まる
実家を解体した場合、いちばん多く聞くのがこれです。登記簿の名義が亡くなった親のままで、申請できる人が決まっていない。
相続人が複数いる場合、誰が手続きをするかを先に決めることになります。解体そのものにも同じ話が付いてきます。誰の物かが決まっていないと、補助の申請も工事の契約も進みません。この順番については尾道の実家を相続したらにまとめました。
解体の前に片付けと権利の確認を済ませておく理由が、ここにも1つあります(解体の前に片付けること)。
税が切り替わる日は1月1日
もう1つ、日付の決まっているものがあります。地方税法の第359条に、固定資産税の賦課期日は当該年度の初日の属する年の一月一日とする、とあります。
その年の1月1日の状態で、その年度の課税が決まるという仕組みです。だから12月に壊すか、年が明けてから壊すかで、その年度の建物にかかる税の扱いが変わります。
ただし、建物が無くなれば安くなる、とは限りません。住宅が建っている土地には税を軽くする特例があるため、更地にするとその軽減が外れることがあります。土地と建物のどちらがどう動くかは、面積や評価によって変わります。金額の見通しは市町の資産税の窓口で確かめてください。
壊さずに置いたままでも、同じ軽減が外れる場合があります。管理不全空家等という区分が置かれ、勧告を受けると特例から外れる仕組みになりました。詳しくは空き家を放っておくと固定資産税が上がるにあります。
売るつもりなら、期限が別に来る
相続した家を売る場合、譲渡所得から差し引ける特例があります。条件に取り壊しか耐震改修が入っているため、解体と順番が絡みます。
制度の骨格は相続した空き家を売るなら3,000万円の控除にまとめました。適用の要件は相続人の数や売る時期によって変わりますので、金額に関わる判断は税務署か税理士に確かめてください。私のほうで書けるのは、片付けと解体がどこに関わるかまでです。
業者からもらう書類を、その場で確かめる
滅失の登記には、建物が無くなったことを示す書類が要ります。工事が終わったときに受け取るものなので、現場が片付いてから探すと手間になります。
- 工事を行った業者が、取り壊したことを証明する書面
- その業者の登記事項証明書か、印鑑に関する証明書
- 建物の登記事項証明書と、位置が分かる図面
必要なものは法務局の管轄や事案によって変わります。何が要るかは、工事を頼む前に法務局の窓口で聞いておくのがいちばん確かです。解体が終わってから聞くと、業者と連絡を取り直すことになります。
更地になった後に残ること
登記と税の手続きが済んでも、土地は残ります。草が伸びれば近所から声がかかり、境の杭が抜けていれば売るときに測り直しになります。
解体の前に浄化槽や井戸の届出を済ませていない場合は、そちらも残っています(解体で別扱いになる物)。家に付いていた欄間や建具、庭の石を残したなら、置き場所の話も続きます(欄間と建具は解体の前に外す)。
実家や空き家の片付けから解体までを通して見るなら実家・空き家の片付けガイドが入口になります。
更地の写真を見ると、私はいつも次の1か月のことを考えます。建物は無くなっても、名前と数字はまだ動いています。そこまでを片付けの一部として数えておくほうが、後が楽だと思っています。
建物の滅失の登記の申請期限は不動産登記法第57条、固定資産税の賦課期日は地方税法第359条の条文を、いずれも e-Gov 法令検索で2026年7月30日に確認しました。登記に添える書類は法務局の管轄や事案によって異なります。税額の見通しと特例の適用は、市町の資産税の窓口、税務署または税理士へ確かめてください。




