相続した実家を売るとき、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例があります。被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例です。
片付けの話にこれが出てくるのは、適用の条件に「取り壊すか、耐震改修する」が入っているからです。しかも期限が短い。
家の中を空けることが、実質の前提になっている
特例を受けるには、売るときに家屋が一定の耐震基準を満たしているか、家屋を取り壊して土地として売るかのどちらかが必要です。
どちらを選んでも、家財が残ったままでは進みません。取り壊すなら中身を出す必要があり、耐震改修でも工事のために家を空けることになります。耐震改修を選ぶなら市町の改修補助も見ておく価値はありますが、対象者の条件が4市町で分かれます。売るために直す場合は使えないことがあります。
売却の話が具体的になってから片付けを始めると、この工事の時間が確保できません。先に中身を減らしておくかどうかで、選べる道が変わります。
買主が工事する形も認められた
以前は、売主が引き渡しまでに耐震改修か取り壊しを終えている必要がありました。令和6年1月1日以後の譲渡からは、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修または取り壊しが行われた場合も対象に加わっています。
買主が工事する形でも間に合うようになった、ということです。売主が先に多額の解体費を負担しなくてよくなった点で、実務上は大きな変更です。
ただし期限は動きません。年末に売れば、翌年2月15日まで2か月足らずです。
主な要件
国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」から、実家の片付けに関わるものを抜き出します。
- 家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたものであること
- マンションなどの区分所有建物は対象外
- 相続の開始の直前に、被相続人が一人で住んでいたこと(老人ホーム入所などは別の扱いがある)
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 売却代金が1億円以下であること。同じ被相続人の家を複数の相続人が売る場合は合算で判定
- 適用期間は平成28年4月1日から令和9年12月31日まで
昭和56年5月31日という日付は、耐震基準が変わった時期です。昭和56年6月以降に建った家は、そもそも対象になりません。
相続人が3人以上だと2,000万円に下がる
令和6年1月1日以後の譲渡では、その家屋と敷地を相続または遺贈で取得した相続人の数が3人以上の場合、控除額は1人あたり2,000万円になります。
兄弟が3人いる実家では、ここが効いてきます。誰が相続するかを決める段階で、税額まで変わるということです。
相続財産を売ったときの取得費加算の特例とは、どちらか一方しか使えません。
3年という期限の数え方
「相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」は、丸3年ではありません。
たとえば2026年4月に相続が開始した場合、3年を経過する日は2029年4月。その日が属する年の12月31日なので、期限は2029年12月31日です。3年8か月ほどあることになります。
長いようですが、相続登記、遺産分割の合意、家財の処分、解体または耐震改修、買主探しをこの中で終える必要があります。名義が決まらないまま2年経つことは珍しくありません。
片付けの側から見た順番
- 建築年を確かめる。昭和56年5月31日以前かどうかで、この特例を使えるかが決まる
- 相続人が何人になるかを確かめる。3人以上なら控除額が下がる
- 相続登記を進める
- 家財を減らす。売るにしても壊すにしても、中身が入ったままでは動かせない
- 売り方を決める。自分で壊してから売るか、買主に任せるか
1つ目は建物の登記事項証明書で分かります。片付けを始める前に確かめておく価値があります。対象外だと分かれば、解体を急ぐ理由が1つ減ります。
権利関係の整理については尾道の実家を相続したらにまとめました。市町の補助を併せて使う場合は、補助金を使うなら、片付ける前に順番を確かめるも見てください。市町の解体補助には「他の補助金を受けている工事は対象外」という条件があることがあります。
この記事だけで判断しないこと
ここに書いたのは制度の骨格だけです。実際の適用は、相続の経緯、居住の実態、売却の形によって変わります。老人ホームに入所していた場合の扱いや、店舗を兼ねていた家の判定など、個別の論点が多くあります。
使えるかどうかの判断は、税務署か税理士に確かめてください。当サイトは古道具と片付けの案内所であって、税務の相談先ではありません。
それでも建築年と相続人の人数は、片付けを始める前に自分で確かめられます。そこだけでも先に見ておくと、あとの選択肢が広がります。
公式情報確認日:2026年7月27日。要件と適用期間は税制改正で変わります。ここに書いたのは国税庁タックスアンサー No.3306 および国土交通省の資料に拠ります。適用の可否は必ず税務署または税理士に確認してください。




