法事のたびに出していた膳と椀が、木の箱に入ったまま納戸に積んである。数が多いので、まとめて縛って出したくなります。その前に、底や下げ札を見てください。書いてあることで、扱いが変わります。
「漆器」と書けるのは、天然の漆だけ
塗りの器には、表示の決まりがあります。消費者庁の雑貨工業品品質表示規程に、こう定められています。
「品名の表示に際しては、表面の塗装に天然の漆のみを使用したものにあっては『漆器』の用語を用いて表示することとし、その他の塗料を使用したものにあっては合成漆器等その品名を示す用語を用いて適正に表示すること。」
つまり「漆器」と名乗れるのは、表面に天然の漆だけを使った物です。ほかの塗料なら「合成漆器」などと書き分けることになっています。
見た目では分かりません。よくできた合成漆器は、つやも手ざわりも漆に近い。だから、まず表示を探します。
塗りの種類は、5つの言葉で書き分けられる
同じ規程は、表面の塗りをどう書くかも定めています。次の言葉が使われていたら、それが表面の塗りです。
- 漆塗装 — 漆を塗ったもの
- カシュー塗装 — カシュー樹脂塗料を塗ったもの
- メラミンアルキド塗装/ユリアアルキド塗装/ウレタン塗装 — それぞれの樹脂塗料を塗ったもの
下地に別の塗りをしている物は、表面の塗りの次に括弧書きで「下地塗装」と書き添えてよいことになっています。表示が二段になっていたら、前のほうが表面です。
カシューは漆に似せた塗料で、見分けの難しさから、この表示があると助かります。
木か、樹脂か、その混ぜ物か
塗りの下の素地も、書き分けが決まっています。天然の木なら「天然木」と書き、木の種類を括弧で足してよいことになっています。樹脂ならその樹脂の名前です。
間の物もあります。樹脂に木の粉を混ぜて成型した器です。この場合は木の粉の重さの割合を百分率で書き添えることになっていて、割合が五十パーセントを超えるかどうかで言葉の並びが変わります。
木の粉が半分を超えていれば「木粉と◯◯の成型品」、超えていなければ「◯◯と木粉の成型品」。多いほうが先に来ます。表示された数値には、前後五までのずれが認められています。
持ったときの軽さや、木目の見え方だけでは決められません。木目に見えて、印刷されていることがあります。
小さい物には、表示が省ける
箸や小さな椀に何も書かれていないことがあります。手抜きとは限りません。
規程には、置いたときに上から見た面積が二百平方センチメートル未満の物については、「表面塗装の種類」と「素地の種類」だけの表示でよい、とあります。おおよそ十四センチ角より小さい物です。
だから、小さい器ほど情報が少なくなります。同じ組の中で大きい物を先に探して、そちらの表示を読むほうが早い。
表示が無い物のほうが、家には多い
ここまで表示の話を書きましたが、古い家から出てくる膳や椀には、表示が付いていないことのほうが多いはずです。
表示の決まりは、売られる品に掛かるものです。婚礼のときに誂えた物、寺や講から回ってきた物、産地で直に求めた物には、もともと札が付いていません。剥がれてしまった物もあります。
その場合は、木の箱のほうを見てください。ふたの表と裏に、品名や数、誂えた年が書かれていることがあります。箱は器の一部として扱い、中身と離さないでください。
数がそろっているかどうかも、そのまま残します。組の数え方は古い食器は売れる?に書きました。手入れの仕方も同じ記事にあります。
撮るのは4か所
- 積んである状態のまま全体。数が分かるように
- 1点の全体。ふたのある物はふたを載せた形で
- 底。表示や書き付けがあればその部分を近くから
- 木箱があれば、ふたの表と裏
表示は小さくて薄いので、明るいところで撮ってください。読めない文字は読めないまま撮る、という進め方は名前の分からない古道具でも相談できる?と同じです。
手放すと決めた後の行き先
素地が木か樹脂かで、ごみの区分が変わることがあります。表示を読んでおくと、ここで効いてきます。数がまとまると粗大ごみの扱いになる市町もあるので、自分の地区の案内を確かめてください。
買取も頼むなら、その業者に古物商の許可があるかを確かめます。家から出た物を運ぶ許可とは別の許可です。確かめ方は片付けを頼む業者に許可があるかにあります。
蔵や納屋から出てきたなら、先に決めることが別にあります。蔵の整理は何から始める?を参照してください。
表示を探す、箱を離さない、数を崩さない。この3つで判断は後からできます。実家の片付け中なら捨ててはいけない物として一度保留してください。
古い物の見方は古い物を手放す前のガイド、確認対象の例は相談対象になりやすいものにまとめています。
品名・表面塗装・素地の表示と、二百平方センチメートル未満の取扱いは、消費者庁「雑貨工業品品質表示規程(十二 漆又はカシュー樹脂塗料等を塗った食事用、食卓用又は台所用の器具)」で2026年8月2日に確認しました。表示の決まりは販売される品に掛かるもので、表示が無いことが品質を示すわけではありません。ごみの区分は市町村ごとに異なります。




