押し入れの上段に並んだ木の箱、茶の間の戸棚に残った茶碗。茶道具は、一つずつ見ていくと判断がつきません。組で使われてきた物だからです。
1点ずつ分けない
茶碗、茶を入れる小さな容器、水を張る器、湯を沸かす釜、竹の匙、柄の長い杓。これらは一式で使う道具です。片付けのとき、「茶碗は食器」「釜は金属」と種類ごとに分けて別の袋へ入れると、組が崩れます。
崩れた組を後から戻すことはできません。どれとどれが一緒に使われていたかは、しまわれ方にしか残っていないからです。棚の一段、押し入れの一角、同じ布に包まれた数点。その単位のまま動かしてください。
同じような茶碗が10も20も出てくる家は、人を招いていたか、稽古をしていた家です。数が多いこと自体が特徴なので、1つずつ並べる前にまとまった状態を撮っておきます。
箱、袋、筒は中身の一部
茶道具は、入れ物に情報が残る度合いがとくに高い分野です。
- 木の箱。ふたの表と裏、側面に文字
- 布の袋。ひもの色や結び方も含めて一組
- 細い竹の匙が入った筒。筒のほうに文字が書かれていることが多い
- 箱を包んでいた風呂敷、真田紐
- 箱の中に一緒に入っていた紙
とくに竹の匙は、それ自体には何も書かれておらず、筒だけに文字があります。細長い筒を「ただの入れ物」と見て捨てると、その一本が何なのか分からなくなります。
箱と中身が入れ替わっていることもあります。その場で直そうとせず、箱と中身を並べて撮ってください。箱を手がかりにする考え方は古い食器は売れる?と同じです。
季節で入れ替わるので、家の中に分かれている
茶の道具は、寒い時期と暖かい時期で使う物が変わります。そのため、いま出ている一式のほかに、もう一式が別の場所にしまわれていることがあります。
押し入れの天袋、仏間の地袋、離れ、蔵。片付けの序盤に見つけた分だけで「これで全部」と決めないでください。後から出てきた分を先に処分してしまうと、そろっていた組が欠けます。
蔵や納屋から箱ごと出てくる場合は、先に建物と足元を確かめます。順番は蔵の整理は何から始める?に書きました。
素材で傷み方が違う
同じ一式の中に、焼き物、鉄、竹、木、漆、布が混ざります。それぞれ弱点が違うので、まとめて同じ扱いにできません。
文化庁の「国宝・重要文化財の公開に関する取扱要項」は、陶磁器、銅製品などの工芸品の公開日数を年間延べ150日以内としています。一方で絵画は原則60日以内、たい色や材質の劣化の危険性が高いものは30日以内です。国が扱いを分けているほど、素材によって傷み方が違うということです。
家の道具にこの日数が当てはまるわけではありません。ただ、竹と布は焼き物より弱い、という順序だけは覚えておいてください。竹の匙を焼き物と一緒の箱へ雑に入れると、それだけで折れます。
洗わない、水に浸けない
抹茶の粉が乾いてこびりついた茶碗を、食器と一緒に洗ってしまう人がいます。ですが、茶碗の中には水を吸うものがあり、乾ききらないうちにしまうとにおいとかびが出ます。
釜や鉄の道具は、水に浸けると錆びます。内側の付着物は落とすものではありません。鉄の道具の見方は鉄瓶が出てきたらにまとめました。
漆の器も、熱湯と食器洗い機と直射日光を避けます。乾いた布で拭くだけにとどめてください。
撮るのは5か所
- しまわれていた状態のまま、棚や押し入れの全体
- 箱を並べた全体。数が分かるように
- 箱のふたの表と裏
- 中身の全体。焼き物は裏返した底も
- 袋や筒があれば、文字の部分を近くから
全部を1点ずつ撮る必要はありません。まず箱の並びを撮り、そのうえで文字のある面を近くから撮ってください。読めない文字は読めないまま撮る、という進め方は名前の分からない古道具でも相談できる?と同じです。
床の間に軸が掛かっている家では、軸も同じ組の一部として扱われていたことがあります。軸の外し方は掛け軸を片付ける前にに書きました。
手放すと決めた後の行き先
焼き物、金属、竹と木で、ごみの区分が分かれます。区分の呼び名は市町村ごとに違い、割れ物として出し方が決められていることもあります。自分の地区の案内を先に確かめてください。
買取も頼むなら、その業者に古物商の許可があるかを確かめます。家から出た物を運ぶ許可とは別の許可です。確かめ方は片付けを頼む業者に許可があるかにあります。
組を崩さない、箱と袋と筒を捨てない、洗わない。この3つで判断は後からできます。実家の片付け中なら捨ててはいけない物として一度保留してください。
古い物の見方は古い物を手放す前のガイド、確認対象の例は相談対象になりやすいものにまとめています。
公開日数は文化庁「国宝・重要文化財の公開に関する取扱要項」(平成8年7月12日文化庁長官裁定、平成30年1月29日改訂)で、2026年7月29日に確認しました。国宝・重要文化財を対象とした要項で、個人の所蔵品を縛るものではありません。ごみの区分は市町村ごとに異なります。




