和箪笥の引き出しを開けると、白い紙に包まれた平たい包みが重なっています。着物は、包みから出す前に決められることが多い物です。まず、たとう紙ごと引き出しから出してください。
表示が付いていれば、素材で迷わない
着物と羽織は、家庭用品品質表示法の対象品目です。消費者庁の規程では、羽織には袷、単羽織のほか茶羽織等が含まれ、着物には浴衣、振り袖、留め袖等、コート類を除く全ての和服用外衣が含まれる、とされています。帯、足袋、羽織ひも及び帯締めも、それぞれ対象品目です。
対象になる物には、組成繊維である全ての繊維の名称に混用率を百分率で併記して表示すること、家庭洗濯等取扱方法を表示すること、表示した者の氏名又は名称と住所又は電話番号を付記することが定められています。
つまり、表示が残っていれば、絹なのかそうでないのかを自分で当てる必要はありません。まず紙や布のラベルを探してください。ただし、和裁で仕立てられた古い誂えの品には付いていないことのほうが多いです。無ければ無いまま進めます。
ラベルは、取れない場所に付いている
「表示が無い」と決める前に、探す場所を絞れます。消費者庁の案内は、ラベルの付け方をこう定めています。
「消費者が簡単に分かる箇所に見やすく、縫い目などに隠れず、かつ、しっかりと容易に取れない方法で繊維製品に取り付けなければならない」。つまり、あるなら見える所にあり、簡単には外れません。裾を持ち上げて振っても落ちない物です。
表示のしかたにも決まりがあります。羽織と着物は、表地と裏地を分けて書いてよいことになっています。裏生地を分離して組成を表示する方法が認められている品目に、コートやスカートと並んで「羽織及び着物」が挙がっています。胴裏と八掛で素材が違う品は、そのとおりに2行で書かれます。
混用率には許容範囲もあります。100%と書ける条件は、毛なら3%以内、毛以外なら1%以内の誤差まで。「絹100%」が厳密に100%とは限りません。誤差を織り込んだ上での表示です。
洗濯記号の形で、時期が3つに分かれる
ラベルに洗い方の記号が並んでいたら、その形が手がかりになります。記号の規格は2回変わっています。
- 平成28年11月30日まで — 旧記号。22種類
- 平成28年12月1日から — JIS L0001 の記号。41種類に増えた
- 令和6年8月20日から — さらに改正された記号
記号は、洗濯、漂白、タンブル乾燥、自然乾燥、アイロン仕上げ、ドライクリーニング、ウエットクリーニングの順に並べる決まりです。並びの数と形を撮っておけば、いつごろ仕立てられた物かの手がかりになります。読み解く必要はありません。
逆に言えば、記号が1つも無い着物は、この規格が及ぶ前の物か、規格の外で仕立てられた物です。表示が無いことは、古いことの手がかりであって、価値が無いことの証拠ではありません。
たとう紙から出さない
包みを開けて広げると、たたみ直せなくなります。着物のたたみ方は決まっていて、折り目が合わないまま重ねると、そこに新しい線が入ります。
中を確かめたい場合は、包みを開くところまでにして、広げるのは上前の部分だけにしてください。畳の上に紙を敷き、その上で開きます。立ったまま持ち上げると、自分の重みで裾が引きずられます。
たとう紙自体に、店の名前や品名、寸法が書かれていることがあります。紙が茶色く変色していても、書かれている面は捨てずに残してください。
しつけ糸を切らない
白い糸が、袖口や裾に粗く縫い付けられていることがあります。仕立て上がりのまま一度も着ていない印です。
「邪魔だから」と切ってしまうと、その印が消えます。着るために出したのでなければ、そのままにしてください。
同じように、帯に巻かれた紙の帯、値札、購入時の袋も残します。未使用のまま残っている物は、そろっている点が手がかりになります。
洗わない、日に当てない
しみを見つけると、その場で落としたくなります。ですが、水を含ませると輪じみになり、こするとそこだけ布目が動きます。
虫干しのつもりで庭やベランダに出すのも避けてください。日光で色が変わります。風を通したいなら、日の当たらない部屋で、椅子の背などに掛けて数時間置けば足ります。
藍で染めた布は水に弱く、洗うと色が落ちます。和箪笥から出てくる古い布の扱いは備後絣と和箪笥の古い布にまとめました。
寸法を測る
着物は、体に合わせて仕立てられています。同じ柄でも、寸法が合わなければ着る人が限られます。判断を分けるのはここです。
- 背の縫い目から袖口までの長さ
- 肩から裾までの長さ
- 袖の丈
- 前の合わせの幅
たたんだまま、平らな場所でメジャーを当てれば測れます。広げる必要はありません。数字を写真に書き添えておけば、着られるかどうかの見当がつきます。
身内に譲るつもりがある場合も、先に測っておくと話が早く進みます。
帯と小物は別に数える
着物だけをまとめて袋に入れ、帯や小物を別の袋へ入れると、組み合わせが分からなくなります。とくに帯は、それ自体が独立した品目として扱われます。
帯締め、帯揚げ、半襟、足袋、草履、バッグ、簪。引き出しの下段や小箱に分かれて入っていることが多いので、片付けの途中で見つけたら一か所へ寄せておいてください。
入れ物の箪笥そのものを残すか手放すかも、あわせて決めることになります。家具の見方は古い家具は処分前に確認した方がよい?にまとめました。
撮るのは5か所
- 引き出しを開けた状態の全体。何枚あるかが分かるように
- たとう紙の表。文字があれば読める距離で
- 包みを開いた状態の全体
- ラベルや表示があればその部分
- しみ、変色、虫食いがあればその部分
傷みは隠さずに撮ってください。後から話が違うことになるより、先に見えているほうが進みます。読めない文字は読めないまま撮る、という進め方は名前の分からない古道具でも相談できる?と同じです。
手放すと決めた後の行き先
布は、区分としては燃やせるごみになる地域が多いものの、量がまとまれば持ち込みになります。資源として集めている自治体もあります。自分の地区の案内を先に確かめてください。
買取も頼むなら、その業者に古物商の許可があるかを確かめます。家から出た物を運ぶ許可とは別の許可です。確かめ方は片付けを頼む業者に許可があるかにあります。
遺品整理の途中なら、処分と買取のどちらを先にするかで手順が変わります。遺品整理と買取はどちらが先?を先に読んでおくと、二度手間になりません。
包みから出さない、糸を切らない、洗わない。この3つで判断は後からできます。実家の片付け中なら捨ててはいけない物として一度保留してください。
古い物の見方は古い物を手放す前のガイド、確認対象の例は相談対象になりやすいものにまとめています。
対象品目と表示事項は消費者庁「繊維製品一覧表」および「羽織及び着物」の項、ラベルの付け方・裏生地の表示・混用率の許容範囲は同庁「繊維製品の表示について」、洗濯記号の改正時期は同庁の洗濯表示の案内で、2026年7月29日に確認しました。仕立てられた誂えの品には表示が付いていないことがあります。記号の形から分かるのは時期の手がかりまでで、産地や作者は分かりません。ごみの区分は市町村ごとに異なります。




