床の間の脇や押し入れの奥に、長い布の袋が立てかけてあることがあります。中身は琴です。福山の家では珍しくありません。この土地が琴の産地だからです。
福山琴は、楽器として全国で初めて指定された
福山琴は1985年(昭和60年)5月22日に、経済産業大臣指定の伝統的工芸品になりました。広島県「福山琴」によると産地は福山市、主要材料は桐です。
福山商工会議所は、この指定が楽器としては初めてだったこと、2006年(平成18年)に地域団体商標の認定を受けたことを記しています。福山市自身は「全国有数の琴の生産地」と紹介しています。
始まりは江戸時代初期とされます。福山城が築かれたころから作られてきた、ということになります。
つまり福山の家にある琴は、たまたま置かれた物ではないことがあります。近くで作られ、近くで買われ、そのまま残っている物です。
一式そろっているかを先に見る
琴は本体だけでは弾けません。付属の品がそろっているかどうかで、扱いが変わります。
- 琴柱(ことじ)…絃を支える駒。13個で1組。専用の箱に入っていることが多い
- 絃…張ったままか、外して束ねてあるか
- 琴爪と爪箱…指にはめる爪。流派で形が違う
- 琴袋、カバー…本体を包む布や樹脂の袋
- 琴台、足…演奏時に本体を載せる台
押し入れを片付けていると、これらが別々の場所から出てきます。小さい箱ほど「何か分からない物」として先に捨てられがちです。長い袋を見つけたら、周りの小箱も一緒に残してください。
見るところは、甲の木目と全体の反り
広島県の紹介では、福山琴の特徴として優れた音色、甲の木目の美しさ、装飾の華麗さが挙げられています。甲というのは、上を向いている湾曲した面のことです。
木目がまっすぐ通っているか、詰まっているか。装飾がどこまで施されているか。この2つは、写真に撮れば伝わります。
状態のほうは、置かれていた場所の影響が大きく出ます。桐は湿気を吸います。長く押し入れにあった琴は、反り、割れ、接ぎの浮きが出ていることがあります。触って確かめるより、まず立てかけた状態と、横から見た線を撮っておくのが確実です。
銘や製造元の名は、外からは見えない位置にあることがあります。無理に覗き込んだり、部品を外したりする必要はありません。
手を入れないほうがよい
- 拭き上げない。表面の艶や古い塗りが変わる
- 絃を張り替えない。張力は本体に影響する
- 琴柱を立て直さない。位置は演奏者ごとに違う
- 袋から出しっぱなしにしない。乾燥と直射日光を避ける
きれいにしてから相談しよう、と考える方は多いのですが、古い物では逆に働くことがあります。そのままのほうが分かることが多い、と考えてください。
運ぶときは長さと重さに注意する
琴は細長く、成人の身長を超える長さがあります。片手では持てません。桐は軽い木ですが、全体では相応の重さになります。
階段や廊下の角で無理に回すと、端を欠きます。運び出す前に、玄関までの経路と車に載る長さを確かめてください。無理なら、その場で見てもらうほうが早いこともあります。
産地の組合がある
福山琴を作っているのは福山邦楽器製造業協同組合です。所在地は福山市西町二丁目10-1、福山商工会議所内。電話は084-921-2349です。
修理や、作り手についての問い合わせはこちらが本筋です。手放すかどうかを決める前に、まず何なのかを知りたい場合の選択肢になります。
物の見方の基本は名前の分からない古道具でも相談できる?、捨てる前に確かめたい物は実家の片付けで捨ててはいけない物にまとめています。福山で出る物の全体像は福山市で骨董品を売る前にをどうぞ。
弾く人がいなくなった琴は、置き場所に困る物になります。ただ、産地で作られた楽器であることは変わりません。処分を決める前に、袋から出して1枚撮ってください。押し入れから出た楽器の扱いは、三味線や尺八も含めてまとめてあります。
公式情報確認日:2026年7月27日。指定年、組合の所在地・電話番号は変更されることがあるため、問い合わせ前に確認してください。




